CCSとは?
近年、地球温暖化対策のひとつとして注目されている技術に「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)」があります。
これは、工場や発電所から排出される二酸化炭素(CO₂)をそのまま大気中に出さず、回収して地下に貯留する仕組みです。
「CO₂を空に逃がさず、地下に閉じ込める」というシンプルな発想で注目が集まっていますが、「何が起きるのか未知数すぎる…」現状、早期の実用化に対し大きな懸念が持たれています。

CCSの基本的な仕組み
回収(Capture)
火力発電所や製鉄所などで発生する排ガスから、二酸化炭素だけを分離・回収します。
輸送(Transport)
回収したCO₂を、パイプラインや船で輸送します。
貯留(Storage)
地下1,000m以上の深い地層に、高圧をかけて「超臨界流体(ちょうりんかいりゅうたい)」という状態にしたCO₂を注入します。
この状態では気体と液体の中間のような性質を持ち、効率的に貯留できます。
超臨界流体についてさらに詳しく
物質は、次の性質をもっています。
- 温度を高くすると、液体から気体になろうとする
- 圧力を高くすると、気体から液体になろうとします
温度と圧力の両方を高くすると、液体になろうとする一方、気体にもなろうとします。
これを突き詰めていくと、ある一定以上の温度・圧力のときに、気体と液体の境界が消えて「超臨界流体」という別の状態になります。
超臨界流体は、気体のようにサラサラ流れ、液体のようにそこそこ高い密度ですので、大量のCO₂を移動・貯留させるにとても便利な状態です。
日本での取り組み例
- 北海道苫小牧で実証試験を実施し、100万トン以上のCO₂を安全に貯留。
- 千葉県の内房〜外房エリアでも、工業地帯で排出されるCO₂を外房沖の地層に貯める構想が進んでいる。
CCSのメリット
温暖化防止:CO₂を大気中に出さないことで、気候変動の原因を減らす。
産業の脱炭素化:鉄鋼業やセメント業など、排出をゼロにしにくい分野の解決策となる。
新しい産業の可能性:CO₂を貯めるだけでなく、利用(CCU)につなげる研究も進んでいる。
CCSのデメリット
コスト:回収・輸送・貯留に多額の費用がかかる。
安全性:地震や断層活動によるCO₂漏洩の懸念。
地域理解:貯留地周辺の住民への説明や合意形成が欠かせない。
データ不足:苫小牧以外、大規模に長期実証した例がほとんどなく、数十年~数百年の安全性を示すデータが乏しい。
まとめ
CCSは、再生可能エネルギーや省エネと並ぶ「脱炭素社会の切り札」の一つとされています。
ただし、データ不足、地震、コスト、安全性や住民の理解といった課題もあり、今後の取り組み次第で普及の度合いが大きく変わっていくと考えられています。